Global hierarchical collapse in molecular clouds. Towards a comprehensive scenario
We present a unified description of the scenario of global hierarchical collapse (GHC). GHC constitutes a flow regime of (non-homologous) collapses within collapses, in which all scales accrete from their parent structures, and small, dense regions begin to contract at later times, but on shorter time-scales than large, diffuse ones. The different time-scales allow for most of the clouds’ mass to be dispersed by the feedback from the first massive stars, maintaining the cloud-scale star formation rate low. Molecular clouds (MCs), clumps, and cores are not in equilibrium, but rather are either undergoing contraction or dispersal. The main features of GHC are as follows: (1) The gravitational contraction is initially very slow, and begins when the cloud still consists of mostly atomic gas. (2) Star-forming MCs are in an essentially pressureless regime, causing filamentary accretion flows from the cloud to the core scale to arise spontaneously. (3) Accreting objects have longer lifetimes than their own free-fall time, due to the continuous replenishment of material. (4) The clouds’ total mass and its molecular and dense mass fractions increase over time. (5) The clouds’ masses stop growing when feedback becomes important. (6) The first stars appear several megayears after global contraction began, and are of low mass; massive stars appear a few megayears later, in massive hubs. (7) The minimum fragment mass may well extend into the brown-dwarf regime. (8) Bondi–Hoyle–Lyttleton-like accretion occurs at both the protostellar and the core scales, accounting for an IMF with slope dN/dM ∝ M−2. (9) The extreme anisotropy of the filamentary network explains the difficulty in detecting large-scale infall signatures. (10) The balance between inertial and gravitationally driven motions in clumps evolves during the contraction, explaining the approach to apparent virial equilibrium, from supervirial states in low-column density clumps and from subvirial states in dense cores. (11) Prestellar cores adopt Bonnor–Ebert-like profiles, but are contracting ever since when they may appear to be unbound. (12) Stellar clusters develop radial age and mass segregation gradients. We also discuss the incompatibility between supersonic turbulence and the observed scalings in the molecular hierarchy. Since gravitationally formed filaments do not develop shocks at their axes, we suggest that a diagnostic for the GHC scenario should be the absence of strong shocks in them. Finally, we critically discuss some recent objections to the GHC mechanism.
Memo
- 分子雲の広帯域なスペクトル幅(超音速的な動き)の解釈について、かつては「重力収縮によるもの」という説が星形成効率の低さなどを理由に否定され「小規模な乱流による支持」という説が主流となったが、近年の観測技術の向上により、再び「分子雲全体やフィラメント構造が重力によって収縮・流入している」という見方が有力になりつつある
- GMCの数値シミュレーションから以下が明らかになった
- 巨大分子雲(GMC)は、周囲の拡散したガスを常に外側から取り込むことで質量を増大させていく動的な存在である
- 形成過程で生じる内部乱流は、個々のクランプ(約1pc以下)を支える程度の音速の数倍(Ms ~ 3)程度に留まり、巨大分子雲全体を支えるには不十分な強さである
- 乱流による支えが足りないため、分子雲はその質量が熱的ジーンズ質量を超えるとすぐに、全体的な重力崩壊を開始する
- 崩壊プロセスは極めて非線形であり、初期段階は非常に緩やかだが、終盤に向かうにつれて急激に加速するという特徴がある
- 重力崩壊の初期段階が非常に低速であるため、磁場の有無にかかわらず、崩壊開始から数百万年の間は星形成が行われない
- シミュレーションで再現された分子雲の相関σv / R^(1/2) = (GΣ)^(1/2)は、自己重力を欠いた乱流モデルでは説明できないものであり、これは雲内の運動が「乱流による均衡(ビリアル平衡)」ではなく、むしろ「全スケールにおける自己重力を主因とした重力収縮(インフォール)」であることを示唆している
- Burkert & Hartmann 2004は収束流によって形成されたガス層の重力収縮を研究し、オリオン座A分子雲の形状や星団の配置が雲全体の収縮によって説明可能であることを示唆しており、近年ではHacarら(2017)によってその裏付けとなる観測証拠も提示されている
- 以上の広範な証拠を踏まえ、Vázquez-Semadeni et al. 2009, 2017は、分子雲が「大局的階層的崩壊(Global Hierarchical Collapse; GHC)」の状態にあると提唱しており、これは乱流が作った密度ゆらぎを種として、あらゆるスケールで重力収縮が多重に発生し、上位の構造から下位の構造へと質量が供給され続ける「質量のカスケード」プロセスであると説明される
- 1970年代、分子雲の超音速的なスペクトル幅は当初「全体的な重力崩壊」と解釈されたが、ZP74およびZE74は、もし崩壊しているなら星形成率(SFR)が観測値より遥かに高くなるはずであること、および収縮を示唆する吸収線の赤方偏移が見られないことを理由にこれを否定し、大規模な組織的運動を伴わない「小規模な乱流」による支えを提唱した
- 「小規模な乱流」説に代わる星形成率(SFR)の謎への回答として、実は「分子雲が重力崩壊で一気に星を産もうとする矢先に、誕生したばかりの巨大質量星が放つ放射や超新星爆発といったフィードバックによって、雲自体がわずか数百万年で霧散・破壊されてしまうため、結果として少量の星しか残らない」という、時間的・空間的に間欠的なプロセスとしての有力な別解が存在する
- もう一つの難問である「吸収線のズレ(赤方偏移)が見られない」という点については、かつての想定が「雲がきれいな球形で、中心一点に向かって均質に潰れる」という単純すぎるモデルだったことが原因であり、実際にはフィラメントやクランプが複雑に絡み合う不均質な構造の中でガスが多方向に流入しているため、単純な赤方偏移として観測されないのはむしろ当然と言える
- 現代の観測において乱流は巨大な構造がまとまって動く性質を持つため、「大規模な運動(ズレ)が見られないから重力収縮はあり得ない」というZE74の論理を認めると、現代の乱流説そのものまで自己矛盾で否定してしまうことになり、結局のところ、その論理的な難問は重力収縮と大規模乱流のどちらに対しても適用できない無効なものである
- 現代的な「単なる乱流」説では解決できない問題として、星形成の有無にかかわらず同程度の速度分散が見られるため星からのエネルギー供給では説明がつかず、また雲の運動エネルギーと重力エネルギーが絶妙に釣り合って見える(等分配に近い)事実が外部からの乱流注入だけでは説明困難なレベルの微調整を必要とするため、むしろ全スケールでの重力崩壊こそがこのバランスを自然に生み出していると考えられる
- Padoan et al. 2016は、超新星爆発(SN)主導の乱流こそが分子雲の運動を支配しており、雲は重力バランスに関係なくσv / R^(1/2) = const.という単純な乱流の性質を示すと主張したが、彼らのシミュレーションはガスの逃げ場がない閉鎖環境での過剰なエネルギー注入である可能性や、比較対象とした銀河系外縁部の雲が特異的に重力の影響が弱い(低密度の)サンプルである可能性を指摘し、むしろ銀河系内の多くの星形成領域では重力の影響を強く受けたHeyerらのスケーリングが一般的である
- 多くの理論モデルは、星からのフィードバック(内部駆動の乱流)が星形成率を自己調節し、分子雲をビリアル平衡に近い安定した状態に保つと仮定してきたが、近年の詳細な数値シミュレーションによれば、フィードバックの真の効果は雲を平衡状態で維持することではなく、ガスの電離による「蒸発」と濃密な破片の「飛散」によって雲自体を破壊・消失させることであると示唆している
- 暖かい中性水素ガス(WNM)の収束流による「外部駆動」での分子雲形成も検討されたが、形成過程で生じる乱流は雲の質量が増大し続けても強さが一定のままであり、その強度もせいぜい音速の数倍程度と、実際の巨大分子雲で見られる激しい超音速状態(音速の10〜20倍)には遠く及ばないため、結局は雲全体を重力から支えきれず崩壊が始まってしまう
- GHC(大局的階層的崩壊)モデルは、観測される激しい運動を「支え」ではなく「自由落下」そのものと捉えることで、星がない雲でも運動が活発な理由と、運動エネルギーが重力と常に釣り合って見える(等分配)理由の双方を、外部の力に頼らず自然に説明できる
- 分子雲の超音速運動を「重力収縮」と再定義するなら、それは単一の崩壊ではなく、ガスの密度上昇に伴ってジーンズ質量が下がり続けることで、より小さな塊が次々と入れ子状に潰れていく「階層的崩壊」のプロセスとして捉えるべきであり、この重力の連鎖こそが星の質量(IMFの下限)を決定付ける物理的根拠となる
- Hoyleが提唱した「階層的崩壊」は、かつて「小さな構造が潰れる前に雲全体が先に潰れてしまう(Tohlineの障壁)」という理論的反論により否定されたが、現代のシミュレーションは、収束流による「ガスの冷却・相転移」「非線形な密度ゆらぎ」「平坦な幾何学形状」といった動的条件がその障壁を打破し、現実の分子雲において断片化が確実に進行することを証明した
- GHCシナリオのアウトラインは以下
- 大局的階層的崩壊は自己重力によって駆動される「質量のカスケード」であり、各構造は常に親構造からガスを供給されつつ、自らの子構造へと質量を引き渡している
- 雲内の非熱的な運動は、背景にある中程度の乱流と、それを圧倒する支配的なインフォール(流入)の二つで構成されている
- 重力収縮はフィラメント状の大きな流れの上に局所的な崩壊が重なる階層構造を持っており、あたかもベルトコンベアのように下位の結節点(ハブ)へガスを運び込む
- 全体的な収縮によって雲の平均密度が上がると、ジーンズ質量が低下し、より小さな密度ゆらぎが時間差で次々と重力不安定となって自律的な崩壊を開始する
- 雲の質量がジーンズ質量を大きく上回ると圧力の抵抗が効かなくなり、重力収縮によって生じる歪みが強調されてシート状やフィラメント状の構造が形成される
- 各スケールの崩壊は、雲の進化の過程でそれぞれ固有の開始時間と初期半径を持ち、局所的な速度ゼロの状態から順次スタートする
- 小さな構造は自ら収縮しながらも、同時に大きなスケールの重力ポテンシャルの中心へと落下しており、大局的な崩壊はこれら局所的な崩壊領域が合体していく過程でもある
- 有限の半径から始まる「重力による自由落下」と、超新星爆発などによる「外からの勢い(慣性)」を組み合わせた運動モデルから、収縮が進むにつれてどんな初期状態からでも最終的には重力支配の自由落下速度へと収束していくことが数理的に示された
- 概念実証のモデル計算の結果、密度ゆらぎを持つ雲が自由落下により収縮する際、時間の経過とともに平均密度が上昇しジーンズ質量が減少するため、より小さな質量の構造ほど順次遅れて重力的に不安定化することがわかった
- 構造が収縮して局所的なジーンズ質量の一定倍(n_MJ)に達するたびに新たな分裂が始まると仮定し、第n階層の分裂に至るまでの時間を導出した結果、この過程に要する時間は乱流のマッハ数には依存しないことが示された
- 超音速乱流下の対数正規密度分布を用いて、典型的なゆらぎではなく最も極端な高密度ゆらぎが最初に崩壊する条件を解析した結果、その発生時期は雲全体の初期自由落下時間の約0.65〜0.9倍という比較的遅い段階になることが示され、数値シミュレーションと定性的な一致が見られた
- 均一な密度を保つ相同収縮は理想的な仮定に過ぎず、実際には複数の(約3個分以上の)ジーンズ質量を含む雲において、局所的な高密度ゆらぎが背景よりも短い自由落下時間で非線形に先行して収縮することで、乱流の強さによらず純粋な重力プロセスとして、密度コントラストが増大する非相同的な分裂が進行する
- 重力収縮の自己相似解を用いた解析によれば、中心に近い高密度領域は外側の低密度領域よりも進んだ進化段階にあると解釈でき、これは物理的にはガスが低密度領域から高密度領域へと有限の時間をかけて流入していることを意味する
- 重力収縮の非相同性により、理想的な仮定とは異なり全てのガスが同時に星になるのではなく高密度領域が先行して崩壊するという事実は、現代の星形成率モデルの基礎となると同時に、早期に形成された星が残りの物質の崩壊を阻害する可能性を示唆している
- 重力収縮過程は特異点形成を境にprestellarとprotostellarの段階に分かれ、prestellar段階では、中心密度に対応するジーンズ長を境界として、内側は密度が一定で流入速度 v が -r に比例し、外側は密度が r^-2 に比例し流入速度が一定となるような、性質の異なる2つの領域を持つ構造へと漸近していく
- protostellar段階では、音速で外側へ広がる境界(衝撃波面)を境にして、内側では物質が中心の星に向かって自由落下し(密度はr^-1.5、速度はr^-0.5に比例)、外側ではまだその影響を受けずに以前と同じ一定速度での流入が続く
- 「静かな釣り合い状態から中心だけが崩れる」とする従来のIOCモデルは、現実の星雲では初期状態が不安定すぎて自然には実現せず、磁場も乱流も重力を支えきれないため、実際には最初から全体が勢いよく潰れる「動的な崩壊」が起こる
- 星間雲は最初から質量が決まっているわけではなく、暖かいガスが圧縮されて「薄いシート状」の冷たいガスに相転移することで生まれ、周囲からガスを取り込み続ける(降着する)ことで質量が増加していく動的な構造体である
- 暖かい希薄なガスから冷たい分子ガスへの相転移に伴う温度低下と密度上昇によりジーンズ質量が最大で6桁も劇的に減少するため、それによって形成されたフィラメントや塊状の構造は乱流では支えきれず、必然的に全体的な重力崩壊を開始する
- 重力収縮の進行に伴い原子ガスから分子ガスへの移行とジーンズ質量の低下が起こり、圧力の影響が弱まることでシート状からフィラメント状への変形が促進されるが、形成されたフィラメントはガスをコアへ輸送する「川」として機能し、内部の縦方向への流れがガスを排出することで、衝撃波を伴わずに特異点の形成を回避しつつprestellar段階に似た状態を維持する
- 重力形成されたフィラメントは、周囲からのガスの流入量とコアへの流出量が自然に釣り合う準定常状態に落ち着くため、乱流起源のフィラメントとは異なり、内部に強い衝撃波(ショック)が発生しないという特徴を持つ(フィラメント内では衝撃波は観測されない=フィラメントは乱流ではなく自己重力由来である)
- 初期の乱流は単独で星形成を引き起こすほど強力ではなく、雲全体の重力収縮が進んで平均ジーンズ質量が低下した段階で初めて局所的なゆらぎが不安定化し、全体の崩壊に先駆けて星として形成されることが数値シミュレーションにより示されている
- 弱い乱流下での動的シナリオを記述するZV14モデルによる計算から、星間雲は静的な存在ではなく、弱い乱流下で全体が重力収縮することで密度が高まり、SFRが時間とともに加速していく動的なシステムであり、最終的に大質量星のフィードバックで雲が破壊されるまでその活動性は上昇し続けることが示された
- 分子雲の重力収縮に伴い、星形成は「低質量かつ低頻度」から「大質量かつ高頻度」へと加速度的に進化し、最終的に大質量星のフィードバックによって終焉するという、動的なSFRとIMFの共進化が示唆される
- フィラメント沿いに落下するガスがハブでの衝撃波により運動エネルギーを散逸させて中心部で新たな星を形成することで、速度分散の差に起因した「中心ほど若く、外縁ほど古い」という星団の年齢勾配が形成される
- 大質量星の電離フィードバックがフィラメントを蒸発させてハブへの物質供給を断つ際、ガス構造に取り残された星々が、元のガスのフラクタルな配置を反映した階層的な星団構造を形成する
- GHCシナリオは、不透明度制限フラグメンテーションや輻射加熱の影響を考慮した最新の知見に基づくと、茶色矮星の質量規模まで天体を形成し得ると結論付けられる
- CMFとIMFの相似性は、星が親コアの質量を単に継承するというコア崩壊モデルの帰結ではなく、GHC下において、コアと恒星という異なるスケールの双方が重力支配的なBHL型降着という共通の成長プロセスを経ることで、独立にサルピーター則的な質量分布へと収束した結果である
- GHCシナリオの本質は分子雲スケールでの時間進化にあり、収縮に伴う平均密度および高密度ガス分率の上昇がSFRを加速させることで、高密度ガス表面密度とSFRの間に観測される相関関係を自然に説明する
- 重力収縮する天体が自由落下速度に達することで、観測される「ビリアル平衡」の状態は運動エネルギーと自己重力エネルギーの等配分として説明できる
- ビリアルパラメータの乱流寄与を純粋に乱流によるものと重力によるものとに分けて記述すると、重力収縮する天体群において、ビリアルパラメータは質量の大きな天体ほど小さくなり、時間経過とともに2へと収束する
- 自己重力的に収縮する分子雲やクランプの集団において、ビリアルパラメータは初期の外部圧縮による高い値から始まり、時間とともに自己重力の支配を強めながら2へと収束していく
- 高密度なコアの多くはすでに重力収縮を開始しているより大きなクランプの内部で形成され、形成初期からサブビリアルな状態にあり、重力収縮の進行とともに自由落下速度へと近づきながら最終的に2へと収束する